人工関節の対象疾患と適応
一般的に人工関節手術の対象となる疾患と適応ケースを紹介します。
人工関節の対応疾患
変形性関節症
変形性関節症は、関節の骨の間にクッションの役割として存在している軟骨が徐々にすり減り、関節に腫れや痛みが生じ、関節の変形につながる変形性の疾患と考えられています。
肩や肘、膝などさまざまな関節で発生し、関節炎が引き起こされることがあり、加齢や肥満をはじめ、事故やスポーツなどでも生じる場合があります。
股関節の場合、骨盤の発育不全による臼蓋形成不全や、生まれつき股関節にずれが生じている先天性股関節脱臼などにより変形がみられ、軟骨がすり減りやすくなる状況にあることで日常生活に支障をきたし、痛みが生じると考えられています。
膝関節の場合、クッションの役割を担っている軟骨や半月板が少しずつすり減り、加齢によって軟骨の再生が不十分になると軟骨以外の骨もすり減り、痛みや炎症が生じるといわれています。
関節リウマチ
関節リウマチとは免疫のはたらきに異常がみられ、関節に炎症が生じ、骨や軟骨が壊されて関節の機能が障害される疾患です。
通常、免疫機能は外部から侵入した細菌やウイルスを攻撃し、排除することによって健康を保っています。しかし免疫に異常が生じた場合、自分の細胞を誤って攻撃してしまうため、炎症が生じ、関節の痛みや腫れが引き起こされると考えられています。
他の関節の疾患と異なる点は、関節を動かさないときでも痛むことがあることといわれています。また全身の関節に影響が及び、手足の関節で症状がみられ、左右同時に発症しやすいことが知られています。
治療の基本は薬物治療ですが、股関節や膝関節に症状がみられた場合は、立つ、座るなど日常の動作に支障をきたしやすいため、人工関節の手術が行われることがあります。
大腿骨頭壊死症
大腿骨頭壊死症とは、大腿骨頭の血流が悪くなり、骨頭の骨細胞が壊死する疾患です。
骨頭が潰れてしまうと関節が変形して痛みや歩行障害につながる可能性があります。年間約2,000~3,000人程度に症状がみられ、骨頭の血流が滞る原因はほとんどが原因不明とされていますが、男性の場合はアルコールの多飲、女性の場合にはステロイド剤の服用に関係していると考えられています。
人工関節の適応ケース
患者さんの状態によって異なりますが、一般的には以下のような場合に人工関節の手術が適応されると考えられます。
薬物療法や理学療法などの保存治療では回復が見込めない
急激に関節破壊が進行している
関節リウマチによる関節の変形などが見られる
日常生活に制限があり、生活の質が低下している
以上、対象疾患と適応についてでした。
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